私は小学生低学年の頃、鉛筆を噛む癖があった。
鉛筆に留まらず、箸の先端や手の指の爪全部
とにかく「噛む」ことがやめられなくて、親や周りから注意ばかり受けていた。
鉛筆や箸は、気がつけばいつの間にかやめられていた。
でも、爪を噛む癖だけは治らなかった。
爪を噛むのは、苛々した時や嫌なことがあった時など、「ストレスから逃れるための行動」と顕著に分かることもあれば、特に何も感じていない時や、無意識のうちに噛んでいたりと、原因が分からないことも多々あった。
私の爪はいつもボロボロだった。
指の肉が剥き出しで、いつも血が出ていて、常に深爪でないと落ち着かないくらいだった。
マニキュアなんてとても塗れないし、とても人に見せられたものではなく、爪を見られたくなくて指を隠すように手を握っていた。
気持ち悪いと思いながらも、噛むことをやめられない。
やめたいのにやめられない。
夫の綺麗な爪が羨ましかった。
そんな私が、爪を噛むことをやめられたのは、つい1~2年前のこと。
この時に買った100均のトップコートが切っ掛けでやめることができた。
初めて自分の爪を綺麗だと思えたこと
涙が出るほど嬉しかった。
爪を噛みたくなる衝動も、何か刺激を受けるたび起こったけれど、爪を守るため必死に我慢した。
辛い。
でも、それ以上に守りたい。
その思いに支えられて、私はやっと、爪を噛みたいという思いから逃れることができた。
先日、爪が派手に欠けた。
幸い血も出ず、怪我もなかったけれど
何かの拍子に爪が欠けるたび、嫌な悪寒が走る。
私は、確かに爪を噛む癖をやめることはできたけれど
“悪寒”はいつも、私の中で私のことを見ている。
今の私なら
きっと“それ”に向き合うこともできるし、その力もあるだろうけれど
何故だろう。
まだ、その気にならない。
“それ”は一刻も早く、私に見つけて欲しいのだろうけれど
私がその気にならない限り、何度もこうして、私に爪を『欠けさせる』。
そうすることで、私に存在を訴えている。
『私はここにいる』と。
5月 大阪 ウォーキングにて
存在には気づいているのに、まだ迎えに行ってやれそうもない。
でも約束する。
必ず迎えに行く と。
誰も 置いてはいかない と。