私、職場の不正の証拠を集められるだけ集めて労基に行こうと思ってた。
辞めたくなかったのに。
まだここで働きたかったのに。
なんで私のシフトが削られて新人にポジション奪われなきゃいけないんだ。(もちろん新人は何も悪くない。)
あいつ絶対許さない
絶対に社会的信用を失墜させてやる。
そう思ってノートに記録書き溜めて
証拠となる写真を撮って(過去の資料だけでも相当ある。)
ラインのメッセージのやり取りをスクショして
ボイスレコーダー持ち歩いて隙あらば失言をゲットしようとして
そこまでしたら仕返しされるかもしれないけど、そのリスクを負ってでも一矢報いてやるつもりだったのにさ。
あんなに酷い扱いされたのに
最後の最後で一番欲しかったものを渡されてしまった。
絶対許さないと思ったのに
内側を突き破る棘はこうも容易く折れてしまうものなの?
不正だと分かっていてもそれが欲しいと思ってしまった。
あいつのことだからきっと鼻が効いたのだろう。
私をこのまま辞めさせたら自分の身が危ないかもしれないと。
そうなる前に手を打った可能性もあると思いながら、私は振り上げた拳を下ろそうとしている。
それに私はケチだから
自分が振り絞った勇気を何もしない奴らにタダで分け与えるのが嫌だと思った。
私が振り絞った勇気なのに、なんであんたたちに美味しい思いさせなきゃならないんだ。
ずるいと思うなら自分で戦え。
絶対に許さないと思ったあいつのケチさ、ズルさ、クズさこそ
私の本性だと知った。
私はケチでズルくてクズだから
あんたたちのためになんか戦わない。
欲しいなら戦え。
誰かが戦ってくれるのを待つんじゃなく
自分で戦え。
私はここを辞めさせられるのじゃなく
全てのことをやり切ったと思い、卒業する。
次のステージへ行くために。
辞める日まで記録は書き続けるし、隙あらば証拠は押さえるから、私がうっかり労基に行かないよう、辞めるまでそのまま好々爺でいてね。